こまやかな鑑賞 その一

打ち合ふや枝の光のきらきらと晴れゐて空の氷る木がらし

                      太田水穂


葉を落としつくした裸木の枝が、寒々と空に伸びて、細かく交錯しているのでしょう。その木はきっと見あげるほどの高さなのだと思います。交錯している細枝が、おりから吹きたってくる風にあおられて、たがいに打ち合うように揺れ動きます。そして、そのたびにきらきらと枝が光るのです。もちろん冬晴れの日で、それも私の感じでは、少なくとも雲のかげもまれな、一面に吹き晴れた空であるに違いないと思われます。しかも、その裸枝の光をバックにした空は、よく晴れていながら、あたかもそのまま静かに氷りついているように見えるのです。寒い木枯らしの風が吹くにつけて氷ってゆくように空は澄みかえっているのでしょう。


先生の鑑賞は、まだまだ続きますので、あとはまた次回とさせて頂きます。

娯楽小説作家:藤本英明 (大空まえる・明日香英麿・藤本楠庭)

絵本・探偵小説・時代小説・随筆・歌集・アダルト小説などを執筆しております。

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